2017/12/07
業界に精通したゲイリー・レイ/Gary Rayが、14年間にわたり記録した4,700行分の表計算ツールのデータをもとに仕入れ管理の方法を語ります。
2017/12/07
業界に精通したゲイリー・レイ/Gary Rayが、14年間にわたり記録した4,700行分の表計算ツールのデータをもとに仕入れ管理の方法を語ります。
以前の記事でも言いましたが、ゲーム店が成功するためには顧客が求めるものを適切なタイミングと量でご提供することが肝要です――それを繰り返すのです。
これは、どんな財務状況にも言える基本的な戦略です。だからこそ、仕入れ用の予算を別に用意しておくことが大切なのです。この方法は「Open to Buy法」と呼ばれ、
それを用いればどれだけの予算を割くべきかがすぐに把握できます。仕入れ予算は経費と異なり、できるだけ低く抑えたいものです。Open to Buy法では、店の目標を達成するための予算だけを設けます。予算が多すぎると過剰在庫になり、予算が少なすぎても在庫切れが多発するのです。
私は同じ表計算ツールを用いて14年間にわたりOpen to Buy法を実践してきました。入力したデータは4,700行にもなります。
売上額 | 売上原価 | 仕入額 | 仕入可能額 |
$2,138 | $1,164 | $2,591 | ($1,427) |
$3,375 | $1,957 | $457 | $73 |
$3,441 | $1,780 | $0 | $1,853 |
売上原価の列には、レジに記録された売り上げを入力します。営業時間終了時のデータを入力ます。仕入れ額の列にはその日に発注したものの金額を入力します。そして仕入可能額の列には売上原価から仕入れ額を引いたものを入力します。そうすることで、仕入れに必要な金額がわかるのです。ここの数字が0に近ければ理想的です。
私の店のビジネス・データは、POSシステムの記録よりもこのワークシートにもとづいています。こうやって商品のコストを算出し、販売計画を立てたり売り上げ報告書を作成したりするのに利用しています。([売上額]の列は必須ではありませんが、他の数字を含めて分析するのに役立ちます。)
1:この方法は商品のコストを算出するものであり、予算そのものを算出できるわけではない。
算出された数字をそのまま予算にしてしまうと、痛い目をみることになるでしょう。
Open to Buy法によってわかるのは、店の商品販売の流れが安定しているかどうかだけなのです。したがって、計画はあらかじめ立てておきましょう。例えばマジックの主力製品の発売時期には、[仕入可能額]を多めに見積もっておきます。また、一時的な予算額の列を追加して、[仕入可能額]の調整をするといいでしょう。(私も実際には10列くらいの表になっています。)
2:この方法はあくまで極端に間違った仕入れを防ぐためのものであり、詳細なデータは得られない。
昨年の在庫状況と現在の在庫状況を比較して、使える金額を確認するのは良いでしょう。記録を取っているだけなので、昨年との差異を見て調整することが可能です。
店舗拡大に踏み切った場合は、支店用の別の表を作成するのではなくその分の予算も設定して仕入可能額を追加しましょう。私の場合、短期間で1万ドルほどの追加なら悩まず受け止められるよう予算を組んでいます。
3:この方法は、ある程度の現金を用意できることが前提になっている。
この方法は貴店の財務状況が良くないと使えないわけではありませんが、利益の上下に備えてある程度の現金は確保しておく必要があります。Open to Buy法では、現金の流れそのものは考慮されません。また他の小売業と異なり、ゲーム店では月ごとや年ごとに数字は大きく変動します。だからもしものときのクッションが必要なのです。
小売業が大いに盛り上がる年末商戦が近づいている今こそ、在庫の補充や設備投資に力を入れるだけでなく現金を残し、「Open to Buy法」を導入してみてください。失うものはありません。Open to Buy法をやめても、現金は残ります。
そしてもう一度言いますが、この方法の最終目標は財務状況に関わらず適切なタイミングで商品を提供することです。ニーズを満たし、お客さまから意見をいただき、今後の商品販売に活かしていきましょう。
(ゲイリー・レイ/Gary Rayはカリフォルニア州コンコードに店舗を構える「ブラックダイヤモンド・ゲームズ」のオーナーです。彼は店舗経営のかたわらゲーム業界についてのブログ「Quest for Fun」を書き、YouTubeチャンネルで面白い企画を追求しています。また12月には、ゲーム店の開店や利益の出し方についての本を出版する予定です。)